口唇口蓋裂で6回もの手術を乗り越えた方の全身調整・前編

今日はお客様の施術例のご紹介です。

(※今回の記事に限らず、当ブログではお客様の施術例については、必ずお客様にブログへの掲載についてご同意を頂き、ご本人を特定できない形で掲載するよう、プライバシーに配慮しております。)


今日ご紹介するのは、藤沢市からお越しのM様(20代の女性)の全身調整です。

M様は、口唇口蓋裂の状態で生まれ、生後まもなくからつい半年前まで、合計6回もの手術を乗り越えて来られたとのこと。

身体の他の部位から骨や皮膚を取って移植したりといった、大変な手術を何度も克服され、半年前に遂にすべての治療を終了されました。

治療は全て終了しているので、今後は整体やエステを受けても大丈夫という主治医の先生の許可を得ておられます。


M様は昔から身体の歪みや痛み、筋肉の張りや緊張、そして顎の歪みに悩んでこられたそうです。

最近になって背中や腰の痛みが酷くなってきたため、全身のバランスを整えて、身体の悩みを解消したいとの思いから、今回当院にお申し込みくださいました。


お申し込み内容を一読するだけで、M様がこれまでに克服されてきた困難が並大抵でなかったことがうかがえましたので、身も心も引き締まる思いでお迎えしました。

お迎えしたM様は、ご自身の歩んでこられた困難な道を嘆いたり愚痴っぽくなったりということがなく、事前にお聞きしていなければ、そんなご苦労や困難を乗り越えてきた方だとは全く分からない、外見的にも話した雰囲気もさわやかで前向きな印象の方でした。

きっと主治医の先生が信頼できる名医だったのではということや、M様ご自身や、M様を支えてこられたご家族が、困難に負けないしなやかな心をお持ちなのではと感じました。


とはいえ、6度もの手術でお顔のバランスが人為的に整えられており(もちろんそれは必要不可欠の手術ですが)、他の部位の骨や皮膚の一部を切り取って移植されている経緯からいっても、

一度も手術の経験のない方とは違い、M様のお身体には骨格レベルで人の手が入っています。

だからこそ、私の施術が、お医者さんの作った骨格バランスとつじつまの合うように調整できるのか未知数で、その分、正直なところ不安もありました。

お身体のバランスを確実に良い方向へと整えていくことは可能ですが、それがM様のご満足頂けるレベルに達するかどうかはやってみないと分からない部分があるからです。

そのため、M様にはその不安要素を事前に正直にお伝えさせて頂いたのですが、M様はニッコリ笑って了承してくださいました。



手術跡が、身体の一部に引っ張る力(テンション)を生み出してしまう


実際のところ、一度でもお身体にメスが入りますと、どんなに見た目に目立たない傷跡であっても、その傷口がふさがる時に、傷口をふさぐ方向に皮膚を引っ張る力(テンション)がどうしてもかかってしまいます。

極端に言うと、皮膚の一部をつねるようなイメージです。

もちろん傷口が引っ張る力は、つねった時に比べればごく微細な力です。

けれど、傷口が治っていこうとする際に、傷口の周辺から傷口に向かっていくベクトルが生じて、それが身体に保存されてしまうのです。

そもそも、単なる突き指や尻もちの古傷でさえ、お身体を引っ張る力が生じて身体の歪みの原因になるくらいですから、

傷口も、その観点から見ると、どんなに綺麗で目立たない傷跡であっても、引っ張る力と無縁ではないのです。


といっても、手術経験のある方は、どうか悲観なさらないで頂きたいですし、これから手術のご予定がある方は無用に心配なさらないでくださいね。

私自身も、先天性の腎臓の病気の手術経験があり、腰に傷跡があります。

腎臓の手術によって元気な身体を得られ、慢性の腰痛から解放されたのですから、この手術をしないほうが良かったなどと思ったことはありません。

手術は、それ以外に治る方法がない方を治癒に導くための、とても大切な治療方法のひとつです。


ただ、手術跡には引っ張る力がかかりやすいことを知っておくと、手術経験のある方が原因不明の身体の不調にお悩みの場合に、その原因として推測できますし、対策や施術方針が立てやすくなります。

手術後に身体のバランスに異変を感じたり、緊張感や疲れやすいなどの不定愁訴が起こったり、身体を左右対称に使っているのに、身体の一部がこったり張ったりしやすくなったなどの場合、手術の影響を疑っても良いと思います。

私も疲れた時に右腕だけに原因不明の張りや痛みが出ることがあるのですが、このことを知ってからは、「ああ、手術跡が引っ張っているな」と無用に心配しないでいられますし、傷跡へのテンションをゆるめるようなセルフケアをすることで乗り切ることができています。


以上のことから、M様はこれまで手術を受けるごとに、口唇口蓋裂の治療そのものは前進しながらも、

同時に全身のバランスはたとえ微細であっても変化し、その変化に対応するために、無意識に身体がバランスを取ろうとして、手術を受けるたびにどこかしらの筋肉が緊張してしまうことの連続だったのではないかと思います。


その上、手術されてきたのは主にお顔(頭)です。

頭と身体の位置関係のズレは、簡単に全身のバランスを変化させてしまいます。

虫歯の治療で歯のかみ合わせが1ミリで変わっただけでも頭の位置はずれるのですから、M様の頭と身体のバランスは変化の連続だったのではと思います。


ですから、M様のお身体の歪みや痛みのお悩みは、傷跡へのテンションや頭と身体のバランスのずれ等によるものが大きいと思われますし、6度の手術と無縁ではないでしょう。


けれど、お身体はどのような状況からでも、その時々に置かれているお身体の中で最善の状態へと整っていくことが可能です。

どのような状況からでも、重心バランスを整えることでなるべく余計な力を抜いても立てるようにし、無用に引っ張る力をゆるめ、緊張を手放し、力を込めるべきところに力を入れやすくなるような身体バランスに近づけていくことはできます。

それは、ヤジロベエの体を、長い両手が釣り合って重心のバランスの取れる位置に配置しさえすれば、針のようにとがった足でも立つことができるのと同じ理屈です。

お身体の持つ自己治癒力を信じてくださいね。


さて、実際の施術は・・


すみません、長くなってしまったので、次回に続きます。