片脚に軽い麻痺がある方の全身調整

今日はお客様の施術例のご紹介です。


横浜市からお越しのI様は、現在4歳と2歳の二人のお子様を育児中で、まだ下の子に授乳もしていらっしゃいます。

1か月ほど続く肩から首にかけてのズキンズキンする痛みと、そのほか夜間の授乳のために背中全体が張っていることにお悩みで、当院にお申し込みくださいました。


肩から首の痛みや、背中全体の張りについては、それほど難しい症例だと感じなかったので、特に心配することもなくお迎えしたのですが・・・

問診して分かったのですが、I様は、以前椎間板ヘルニアにより脊柱の神経を圧迫されたことによる激痛の後遺症で、骨盤の左側から左脚全体にかけて、軽い麻痺が残っていました。

麻痺の程度としては、I様の表現によると、左脚全体の感覚が「ひじ」のような感じだとのことです。

ひじをつねっても、ほかの箇所ほどには痛みを感じませんが、触られているということは分かります。

左の骨盤から左脚全体の感覚が、そのような感覚になっているとのこと。

全く感覚がないわけではなく、歩行時に足を引きずることもないので、I様ご自身では、日常生活に特に不便を感じておられず、問診時にわざわざ説明する必要さえ、あまり感じておられないようでした。


けれど、身体の土台である足の片方の感覚が鈍いというのは、土台のバランスが崩れていることに気付きにくくなってしまうということです。

ほんのわずかな身体の一部分の歪みが、全身に影響を及ぼしていくことさえあるので、

その感覚が鈍いということは、これはどうなるかなあと少しドキドキしながら施術を始めました。


足をそれぞれ片足ずつ、わずかな歪みをとらえて微調整するところまでは問題ありませんでした。

左足に力がなく、仰向けになると左足のつま先がダランと倒れたようになっていましたが、

I様がおっしゃる通り、鈍いながらも感覚はしっかりあったので、調整には問題ありませんでした。


ところが、足を終えて上に進み、膝の調整を始めてから気付いたのですが、普段私が全身をざっくり調整する時に使っている共鳴法が使えないのです。

(正確には、共鳴法は使えるのですが、普段のような使い方ができないのです)



共鳴法が使えない症例


共鳴法とは、手の平を身体の地図に見立て、調整する部位を軽く押した時に感じるお客様の違和感(圧痛)をなくしていくことによって、身体の歪みを整えていく整体の手法です。

そこで施術の道しるべとなるのは、お客様ご自身の身体の感覚です。


押した時に、歪みのない場所であれば、「ただ押されている」という感覚しかありません。

けれど、歪みや骨のズレや靭帯の張りなどのある場所では、軽く押しただけで、痛みや不快感やくすぐったさなどを感じます。

その違和感のある箇所を調整し、歪みが整えば、「ただ押されている」という感覚へと整っていくのです。


I様の膝を押してみますと、両膝ともに違和感がありました。

このような時は、より違和感の強いほうを、より歪みの強い脚と見なすのですが、

I様は当然のことながら、軽い麻痺のある左脚よりも、右脚に強い違和感を訴えられました。

けれど、私が見た感じでは、明らかに歪みが強いのは左脚だと思われました。

つまり、I様の感じる違和感は、I様の身体の歪みを正確に反映していなかったのです。


ああ、これは共鳴法は使えないな、と思いました。

もちろん左右の違和感を比較する必要がない箇所や、麻痺のない箇所には使えます。

ただ、膝はまだしも、骨盤の微細な歪みの調整には、やはり施術者の目視よりも、お客様の感覚が何よりもたよりになるのです。


でも、大丈夫です。

当院で採用している整体の手法はひとつではありません。



ひとつの手法に固執しない


当院では普段から、ほかのお客様への施術にも、共鳴法で全身をざっくり整えた後で、

繋解法という手法を使って、身体の求める順番に調整していく、より身体主体の調整を行っています。

それ以外にも当院では、操体法や野口整体や、新しいところでは新正体法などの手法を適宜取り入れています。

一つの手法、一つの流派にこだわらず、各手法の良いところを柔軟に取り入れていますので、このような時に迷うことがないのです。


I様の場合には、繋解法に入る前に、やはり全身をざっくり整えたほうが良いと判断しました。

それは、肩や首や背中の問題が、明らかに下半身の歪みと関係があると思われたからです。

建物の土台に問題がある時に、壁や屋根だけをいじっても構造的な問題は解消しないのと同様、

身体の歪みの原因が明らかに土台にある場合、そこを飛ばして上半身だけを整えても、根本的な改善には至らないのです。

麻痺のある左脚の動きを右脚や骨盤がかばったり補ったりしてきた結果、I様の土台はかなり歪みや狂いを生じていましたので、できるだけ土台から整えるべき状態でした。


そこで私が使ったのは、新正体法という手法です。

この手法は、私が自分自身の身体の調整に普段から使っているのですが、即効性と汎用性が高いことから、時々お客様の調整にも取り入れることがあります。

お客様の中で、不自然な身体のポーズを取らされた後で、身体の一部を5秒間持ち上げて落とすということをさせられている方がいらっしゃいましたら、それが新正体法です。(全員の方には使っていません。)


I様にはこの新正体法をじっくり使ってまず全身を整え、細部の調整には共鳴法を使い、その後繋解法で、よりお身体主体の調整を行いました。


ただ、通常当院で行っている施術の流れからすると、かなりイレギュラーな内容となりましたので、その分効果のほどはフタを開けてみないと分からないところがありました。

I様は「スッキリしました~、楽しかったです♪」とおっしゃりながらお帰りになりましたが、私自身は「その後どうだったかなあ」と少し心配にも思っていました。


けれどI様から後日感想を郵送して頂き、それを読んでホッとして、心底嬉しく思いました。

(施術当日は時間がなく、感想は後日書いて送ってくださるとのことでしたので、感想用紙と返信用封筒をお渡ししていたのです)


以下が、2週間後にI様から送っていただいた感想です。

(I様は実名公開を構わないとおっしゃってくださいましたが、やはりお身体に関するプライバシーに関わる内容ですので、他のお客様と同様、イニシャルとさせていただきました)

「違和感や痛みの変化

(耐えられない状態を10、全く痛みのない状態を0とした場合)

右肩から首すじにかけて 整体前10 → 整体後


1カ月以上続く右肩から首すじにかけてのズキンズキンとする痛み。

鍼灸や通常の整体に行って、翌日は楽になっても、2日3日経つとぶり返す。

今回井川さんの施術を受けて、当日より翌日、翌日より3日目と、日に日に楽になり、約2週間が経ち、痛みのない生活が送れています。

日常での体の使い方も教えて頂き、自分の体の「くせ」を知り、上手に体を活かせるようになりたいです。

定期的なメンテナンスをして、施術を受けたいと思います。

とても優しくて、初めての施術も、始めから心をひらいて受けることができました。

体も緩んで、開くのを感じました。」



I様、嬉しい感想を送ってくださり、ありがとうございました。


I様はその後再度来院してくださったのですが、足の歪みが嘘のように整っていましたので、2度目の施術は初診時のように戸惑うこともありませんでしたし、調整がとても楽でした。

肩や首の痛みと背中の張りは、下半身の歪みが原因ではないかと予想した通り、やはり下半身をしっかり調整して正解でした。

他院で痛みが取れなかったのは、おそらく下半身へのアプローチが出来ていなかったためだと思われます。


I様は以前他県にお住まいの頃には野口整体を受けておられたそうで、お身体に向き合う姿勢をすでによく心得ておられました。

最初から、

「井川さん、治してください」

ではなく、

「自分の体が備えている治癒力の発揮させ方を教えてください」

という姿勢でお越しになっていました。


私自身は、I様の初診時の施術があれで良かったのか、正直自信はなかったのですが、

I様自身の治りたい気持ちとI様の自己治癒力が、私の施術の効果を補ってくださったのではないかと感じています。


I様はお子様がまだ小さく、ご主人がお休みの日にお子様を預けて、時間をやりくりしてお越しくださっているご苦労は、私も自分の子供達の小さい頃同じでしたので、よく分かります。

だからこそ、できる限り沢山の収穫を得て、より良い育児へと還元していっていただきたいという気持ちを込めて、施術させて頂いています。


これからも、I様のより良い健やかな生活と育児をお手伝いできれば、この上ない幸せです。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。