片側の乳がんの摘出手術をされた方に生じたたすき掛け状の歪み・前編

横浜市からお越しのO様は、数年前に乳がんを患い、右側の乳房を全摘出されていらっしゃいます。


手術のみで悪い部分をすべて取りきることが出来たため、抗がん剤や放射線治療などは受けずに、手術後に妊娠出産も問題なく経過され、現在まで元気にお過ごしです。

病気が判明してから手術後までに、O様がどれだけの身体と心の辛さを味わって来られたかは、私が安易に言葉にできようはずのない、経験した人にしか分からない過酷なものなのだろうと、本当に心が痛みますが、

様々な道のりと思いを経て、現在O様はとても明るく元気に過ごしておられます。

もっとも、どんなに明るく振る舞っておられても、このご病気については、完全に吹っ切れることは一生ないだろうともおっしゃっていました。

(今日の記事に限りませんが、お客様の施術例や施術上の気付き等の内容は、必ずお客様に掲載の許可を頂いてから掲載するようにしています。)

当院には、直接的なきっかけとしては、肩が上がらないお悩みでお越しになられましたが、全体的な体調の改善やメンテナンスを希望されています。

というのも、片側の乳房を摘出されたことによる、身体のバランスの左右差はかなりのものがあるからです。

 

私もO様にお聞きして初めて知ったのですが、乳房は片側だけで平均500g、大きい方ですと1kg前後もの重さがあるのだそうです。

ですから、O様の現在の胸には、常に約500g(500mlのペットボトル1本分)もの重さの左右差が生じているのです。

当然、肩、腕、背中、首など、あらゆる箇所が、この重さの左右差の影響を受け、身体はその左右差をなんとかバランスを取ろうとしていることになります。

この乳房の重さの左右差のために、乳がんの手術後に身体に歪みが生じて、ふらついたり、起き上がれなくなったり、歩けなくなってしまう方もいらっしゃるのだそうです。

 

お医者さんのほうでは、とにかく命を救うことが一番の目的になっているため、乳房を失った後のQOL(生活の質)までは考慮してくださらないそうです。

確かに、一刻を争うガン患者さんが次々といらっしゃる医療の現場では、お医者さんにとってはガンを治すだけで精一杯なのかもしれません。

けれど、胸の片側に500gもの重さを失った身体で、「ハイ、もう異常ありませんよ」と放り出してしまうことには、違和感を感じずにはいられません。


そもそも、左右の乳房の片側だけにガンが生じたということは、ガンが発症する前から、身体に何らかの問題の左右差が生じていたはずなのです。

それが歪みなのか、血行不良なのか、身体の使い方なのか、何かは分かりません。

ただ、左右対称に使えていなかった、何らかの身体の使い方の問題にアプローチすることは、ガンの再発防止のために

「絶対役立ちます」と断言はもちろんできませんが、「無用だ」と一蹴はできないと思っています。(こんなことを書くと医師法違反になってしまうのかなあ・・)

 

さて、前置きはこのくらいにしますが、

当院の初診時、O様は右脇にしこりと違和感があり、経過観察中という状況で来院されました。

初診時にはO様の右の乳房の手術跡には傷がふさがる方向にかなりテンションがかかっており、これが首や肩のこりも引き起こしているようでしたので、そのテンションを緩めるような施術を行いました。

施術中は、全身を整えていく段階で、脇には触れていないのに、O様はしきりに「あ、脇がピリピリします」とか「脇が何か反応している気がします」とおっしゃっていました。

 

そして三週間後、2回目にお越しになった時、脇のしこりや違和感がなくなった気がする、とご報告を頂きました。

もちろんきちんと病院で検査を受けなければ、脇のしこりがどうなったのか確実なところは分かりませんが、

初診の施術で少なからずしこりに良い影響があったようで嬉しく思いました。

 

さて、ここからが今回の不思議なのですが、


2回目の施術でお身体を拝見すると、 O様の左足の甲が、驚くほど顕著に歪んでいたのです。

 

通常、当院では施術の一番最初に足の歪みを整えます。

これは家の土台が歪んだまま、屋根や壁を整えても意味がないのと同じ理屈です。

日ごろからスニーカーなど足に優しい靴で過ごされ、ハイヒールを履く習慣のない方の足の歪みは少ないですし、

ハイヒールの履く頻度の高い方ほど足の歪みが著しいことは言うまでもありません。


足の歪みのない方の足の調整にかかる時間は2~3分、

普通程度の方で5~10分、

これまでに当院で一番足の歪みの酷かった方は、片足に30分ずつ、両足の調整だけで合計一時間もかかりました。

(もっとも、こんなに時間がかかるのは初診時だけです。回数を重ねるごとに、足の歪みは解消していきます)

 

O様は普段ハイヒールは履かれませんし、初診時には足の歪みは普通程度にしかありませんでした。

けれど、2回目にお越しになった時、左足のみ、足の甲の歪み・コリ・緊張・圧痛などが著しく酷くなっており、左足の調整になんと45分もかかりました。

片足のみにかかった時間としては新記録です。

さらに不思議なことに、右足にはほとんど歪みがありませんでした。

  

まるで、右脇のしこりや、右胸の手術跡のテンション、首や肩のこり、その他全身の歪みが解消する代わりに、すべての悪いものが左足に集まってきて凝縮されたかのようでした。


・なぜ右胸や右脇へのテンションが解消すると、他の場所に歪みが生じるのか、

・なぜそれが左側なのか、

・なぜ足なのか、

・このような現象は片側の乳房を摘出された方だけに起こるのか、それとも誰にでも起こるのか、

・・・全て、正直なところ、ハッキリとは分かりません。

 

ただ、ひとつヒントはあるような気がしています。それは・・・

 

・・・長くなってしまったので、次回に続きます(^ ^)