産後の骨盤ケアが母乳の出を左右する

本日発売の雑誌『ひよこクラブ11月号』の「早めが肝心!今スグ骨盤ケアをはじめよう!」という特集に、当院の紹介記事が掲載されました。

そこで、今日はせっかくなので産後の骨盤の回復の重要性についてお話します。

女性の身体は、妊娠や出産はもちろんのこと、それ以外にも、毎月の月経や、授乳期、更年期など、様々な局面でホルモンバランスの影響を受けて変化し続けています。

そうしたホルモンバランスの変化に強い影響を受けているのが骨盤です。

 

骨盤がこうしたホルモンバランスの変化にしなやかに適応して、スムーズに開閉できている時、身体はとても健康でいられます。

けれど、何らかの原因によって、骨盤が歪んだり柔軟性を失ってガチガチになってしまうと、

 たった一回の月経周期、たった一回の月経さえ、気持ち良く経過することが出来なくなります。

 

月経の時に上手く骨盤が開かなければ、出したいもの(経血)がスムーズに出ませんから、

子宮は一生懸命収縮して経血を出そうとします。これが生理痛です。

月経前に頭痛やイライラなどが起こるPMSの症状も、

月経に向けて開いていきたい骨盤が上手く開かないために起こります。

 

月経を上手く経過できない柔軟性の失われた骨盤では、健やかな妊娠期間や、スムーズなお産、満足のいく授乳期を乗り切ることは、さらに難しくなります。

ですから、妊娠出産をするしないに関わらず、月経周期を気持ちよく経過できているかどうかは、自分の健康状態、とりわけ骨盤の状態をチェックするバロメーターになるのです。

毎月スッキリと身体の大掃除をしてくれる月経は、不要なものをデトックスして健やかな身体を維持するために、女性だけに備わった特別なシステムです。

上手く活用して、より良い健康な身体を維持しましょう。

 

さて、このように大切な骨盤ですが、産後の身体にとってはどのような意味があるのでしょうか。

野口整体の野口晴哉さんの著書には、以下のようなエピソードが紹介されています。

 

戦時中のことですが、新潟のある地方に産後の女性が皆そろって母乳が出ない集落がありました。

粉ミルクのない時代ですから、その集落では乳児の死亡率が日本でも一位二位を争うほど高かったそうです。

その集落では、どの家も家の間取りが共通していて、トイレが外にあり、高い段差のある土間を降りて外に出なければ、トイレに行けないようになっていたそうです。

産褥期の女性が1日に何度もこの段差を越えて用を足しにいくことが、産後の骨盤の回復を妨げ、母乳が出ない状況を引き起こしていると考えた野口さんは、

段差を乗り越えずにトイレに行けるように自宅を改修するように指導したそうです(つまりバリアフリー化ですね)。

すると、集落の授乳期の女性は皆よく母乳が出るようになり、乳児の死亡率が改善したそうです(参照:野口晴哉『女である時期』全生社)。

 

このことからも、産後の骨盤の回復は、体型が崩れることを防止する単なる美容目的にとどまらない重要なものであることが分かります。

産褥期の母体、とりわけ骨盤を健全に回復させることは、母乳をしっかり出し、赤ちゃんの命を守ることを意味するのです。

 

上記の野口さんのエピソードからは、産後の骨盤の回復のためには、段差を乗り越えることが良くないことが分かります。

けれど、残念ながら、日本のほとんどの産院で使用されている分娩台は、産婦さんが階段を使って乗り降りする構造になっています。

また、産院自体にも階段があり、退院後の家庭生活でも階段の上り下りがあります。

こうした段差は、産褥期の女性はできるだけ避けたほうが良いのですが、お医者さんや助産師さんはそのような指導をしていません。

 

また、こうした状況に警鐘を鳴らすのは良いのですが、産後に骨盤ベルトを巻くことを推奨する考え方がありますが、これも間違いです。

産後の骨盤は、左右左右と片方ずつ交互に、産後六週間もかけて、ゆっくり少しずつ自分から閉まっていきます。

 

また閉めすぎもいけないのです。

それを一気に加減なく人工的に閉めることは、人体の仕組みに逆らっています。

どうせ閉まるのだから、ベルトで閉めても同じだろうというのが骨盤ベルトの発想ですが、

それならば、これからお産をする骨盤を、どうせ開くのだからと、人工的にこじ開けるでしょうか?

しませんよね。

これらのことは、自然の摂理の中で身体自らの力で行われるべきことなのです。

 

これは、当院、整体処せせらぎの治癒の考え方と共通するものです。

当院では、症状とは「治す」ものではなく、「治る」ものであると考えています。

施術者が余計な刺激や力を加えなくても、身体は自ら治り方を知っています。

ですから、当院では、ボキボキ骨を鳴らしたり強く押したり揉んだりする施術はいたしません。

ただ優しく触れているだけでも、お身体はちゃんと整います。

むしろ、優しく触れているだけだからこそ、お身体は正しく整うのです。

 

身体自身が自分で整ってこそ、その身体にもっともふさわしいバランスに近づくことができます。

そして、それが身体の要求にかなっているからこそ、戻りにくいのです。

押したり揉んだり骨そのものを動かそうと、施術者が余計な刺激や負荷を与える必要はありません。

むしろそうやって他人の目線から人為的に整えてしまうと、それは身体の要求にかなっておらず、かえって身体を壊してしまうことのほうが多いのです。

どんなに目視で最善のバランスに整えたとしても、それがその身体にとってふさわしいバランスであるとは限りません。

身体にふさわしいバランスは、その身体だけが知っているのです。

 

産褥期の骨盤を上手に(つまり人為的な介入なしに自分の力で)回復させる時、野口さんは「出産は美容法である」と言いました。

「全然今迄とは違った美しさが出てくる。美容法だけでなく、健康状態は勿論、動きも敏速になり、自然に体に力が出てくる」そうです(野口晴哉『育児の本』全生社)。

産後六週間もの間、骨盤が自然と左右揃ってしまってくるまで産褥期の女性を寝たきりにさせておくことを指導した野口さんの方法は、現代で実践することは不可能に近いものがありますが、

それだけ産後の身体は大切にしなければならないこと、とりわけ骨盤を大切にし、できる限り段差や階段を使わない、立ち上がる時は足を揃えて立つなど、

可能な範囲で私達も実践していけるといいですね。

 

産後の骨盤をできるだけ早めにケアすることは、以上のように、母体の回復、母乳の産生、産後の健康や美容、健康な身体での育児など、広範囲に良い影響があります。

当院では残念ながら託児システムがないことと、整体の効果を左右してしまうために、お子様連れでのご来院をお断りしておりますが、

(お子様連れが迷惑ということでは決してなく、施術を受けている方の意識がお子様に向けられて、施術から意識がそれると、整体の効果が出にくくなってしまうためです。詳しくは「お子様連れでのご来院について」参照)

産後のお母様のより良い育児や、その後の健康な人生のために、是非周囲の方にご協力頂き、当院の骨盤ケアを受けてみてくださいね。

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。