特殊なインソールが足の緊張や歪みを招き、腰痛まで引き起こした症例

前回の記事の中で、股関節が痛い人は足(=foot)が歪んでいると書いたところ、お客様から

「足が歪んでいるというのはどういうことですか」

とご質問を頂きました。

確かに、外反母趾やハンマートゥなど見た目に分かる問題を抱えていない限り、どういう足を歪んでいると判断するのかは、イメージしづらいかもしれませんね。

簡単なチェック法としては、仰向けに寝た時に、足が左右対称に開くかどうかで判断できます。


歪んでいる足というのは、簡単に言えば、緊張して無用な力が入っている足です。

足指をあちこち強めにつまんだり、足の甲の骨と骨の間(甲の筋)を少し強めに押してみてください。

足に問題がなければ痛みはないはずなのですが、押した時に痛みや違和感や不快感などが少しでもあれば、足に無用な緊張があると言えます。

誰でも多少の緊張はあるものですが、これが高じると、緊張のあるほうに向かって身体が捻じれてきます。


体の歪みは、身体のどこかが安静時にもリラックスできずに部分的に力が入っている(部分的に緊張している)ことによって起こります。

この緊張は左右対称に起こることはあまりありませんから、緊張しているところは縮み、リラックスしているところは伸びます。

その結果、身体が歪んだり捻じれたりするのです。


今日ご紹介するM様は、足の歪みにお悩みだったわけではなく、右の腰からお尻にかけての腰痛を主訴として当院にお越しになりました。

お身体を拝見すると、骨盤の歪みが強く、左右の太ももの太さが違ってしまっていましたが、私が一番気になったのは、足の歪みでした。

仰向けに寝た時、ご自分では足の力を抜いてリラックスしているつもりなのですが、左足が内股になっています。

写真をよく見ると、足だけでなく、左のすねの向き自体が内向きになっていることがお分かり頂けると思います。

このような状態のことを指して、「左足が歪んでいる」と呼んでいます。

お話をうかがうと、ハイヒールなどの足に負担をかける靴を履いていないのに、スニーカーや足にやさしい靴など、どんな靴を履いても足が痛く、足に合わないとおっしゃっていました。


これは足に強い緊張があるということなのですが、これが内股になっている左足だけの問題かというとそういうわけではありません。

足を左右非対称に緊張させないとバランスよく立てないということですから、右足も緊張していますし、主に骨盤などのほか、この方の場合はすねも膝も緊張しています。

前回の記事と同様、この方も、右の腰痛に対応して左足が歪んでいます。

全身は全て関連していますから、全身が整っているのに一か所だけ歪むということは起こり得ないのです。

ですから、足だけ施術すればいいというわけではありませんし、足の歪みは骨盤の歪みと必ず対応していますので、骨盤の調整も必要です。


それでも、足は毎日全体重をかけて身体を支えている場所ですから、足の歪みを取るだけでも随分と全身のバランスが変化します。

これは、ベッドに敷いたシーツの一か所を整えると、関連するシワが全部消えるのに似ています。

ですから、足の施術をしていると、「あっ、腰がジーンと反応しているのを感じます」などと、関係ない場所に良い変化を実感される方も多いのです。


このようにして足を中心に全身を調整すると、足の開きは以下のように整います。


ご本人は施術前と同じようにリラックスして寝ているつもりなのですが、随分と左足の向きが変わっています。

もっともM様の場合、足の緊張が強すぎて、すねや膝も緊張しており、初診では足の歪みは取り切れませんでしたので(左足は大体整ったのですが、右足の歪みが取り切れませんでした)、

完全には左右対称の開きになっていません。

これは足だけでなく、脚や骨盤など、関連する箇所も整うことによって可能になるのです。


初診ではほとんどの時間を足の調整のために使ってしまいましたが、それでもM様の腰痛はほとんど気にならなくなりました。

足の歪みや緊張が腰痛を引き起こしていた良い例です。


初診のお帰りの際に靴(スニーカー)を履いた時、

「あっ!!靴を履いても痛くないです!!

今までどんな靴を履いても痛くて耐えられなかったのに!!」

と感動されてお帰りになりました。

足の緊張と歪みが取れて柔軟になったことで、靴が履きやすくなったのだと思います(^ ^)


なぜM様の足はここまで緊張してしまったのでしょうか。

M様はなかなか合う靴がないので、以前シューフィッターさんに特別なインソールを作ってもらったそうですが、

そのインソールを入れた靴を履いてから足の痛みが強くなり、ますますどの靴も合わなくなったそうです。

これは、特別な形状のインソールによって、足に不自然な負荷をかけることになり、足を緊張させ、すねや膝の緊張まで招き、その緊張が取れなくなってしまったものと思われます。

足には毎日全体重をかけて生活していますので、特殊な形状のインソールを使うことは、足に全体重の重みで力技をかけているのと同じことなのです。


仰向けに寝た時に左右対称に開かない足を、力技で歪みを矯正しようとしても、身体は変わりません。

身体は物理法則に従って理由があって歪んでいるのですから、むしろそういう力技に対しては、身体は抵抗しようとして、かえって緊張を強めてしまいます。


当院には、O脚を直すとか痩せるなどの効能をうたったインソールや、あるいはシューフィッター自作の特殊なインソールなどを使い始めてから足の痛みが強くなって、どの靴も合わなくなった、という方が時々いらっしゃいます。

こうした特別な機能をうたったインソールは、全体重をかけて足に不自然な負荷をかけることになりますので、足の歪みを強めます。

インソールは、消臭やクッション性など通常の目的で入れるならいいのですが、 足のバランスを変化させることを目的とした特殊な形状のインソールの使用はお薦めできません。


以下の写真は、2週間後の2回目の施術後ですが、脚はすっかり柔らかくなり、二回目の施術後には足が左右対称に開くようになりました。(靴下が変わっていますが、同じ方です)


腰痛もすっかり改善しました。

この方には、骨盤の歪みを取り、左右対称に足に体重をかけられるようになるための、簡単な体操もお教えしました。


足の歪みを整えるためには、まず足の緊張している箇所を緩め、さらに全身の関連している部位の緊張も緩めることです。

それと同時に、なぜ緊張する必要があったのかを見極め、その必要を解消しなければなりません。


M様の場合は一時期使っていた特殊なインソールが原因でしたが、

ほかにも、普段の姿勢や身体の使い方が原因のこともあれば、怪我の後遺症、頭の位置やかみ合わせ、特定の部位に負担をかけるスポーツのやりすぎなど、色々な要因があります。

整体の施術は緊張している箇所を緩めて身体をニュートラルな状態にすることはできますが、

そこから先、身体を日常生活の中で左右対称に使えるようになるかどうかは、お客様自身の日常的な心掛けが必要な場合も当然あります。

当院ではそうした日常のアドバイスや簡単な体操などもお教えしています。


なお、以下は補足ですが・・・

M様は初診でタビソックスを履いていますが、これは特殊なインソールと同様に足を不自然な形に緊張させますので、できればこのように不自然な形の靴下は履かないようにしてください。

私が「ご利用案内」で「五本指ソックスが理想」と書いていたために、M様は「五本指は持っていないけど、タビソックスならある」とわざわざ持参してくださったのです。

説明不足で申し訳ありません

私の説明が不足していましたが、私は、日常生活での五本指ソックスの着用は特に推奨していません。普通の靴下で十分です。

私が「五本指ソックスが理想」と書いているのは、

施術の時に足指を一本ずつつまむので、施術時に五本指ソックスを履いていただけると「私が」施術しやすいというだけで、

特に健康効果を狙ってのことではありません。

五本指ソックスは水虫などの病気で足を乾燥させる必要のある方にはいいかもしれませんが、一本ずつ足指を離すことは、足を冷やすことや緊張させることにつながります。

冷え取り靴下(五本指ソックスと普通のソックスの4枚程度の重ね履き)についてお客様から質問を受けることも多いのですが、冷え取りをしたいなら足湯のほうが圧倒的に効果があります。

ここでは書ききれませんが、私は冷え取り靴下には否定的な立場です。