ハイヒールを愛用して足が歪み、手の指に力が入らない

前回のローヒールパンプスに関する記事は反響が大きく、ほとんどが「よくぞ言ってくれました!」という反応ばかりでしたので、とても嬉しかったです。

そんなハイヒール着用にまつわるお客様のエピソードは色々ありまして、話し出すと話題は尽きないという感じなのですが、

中でも、最近一番印象的だったのは、埼玉県からお越しの20代のA様のエピソードです。


彼女はピアニスト志望で、一日に少なくとも5時間以上はピアノに向かい、コンクール前には10時間近く練習することもあるという練習熱心な方で、

言葉の端々から音楽やピアノをこよなく愛していらっしゃることが伝わってくる、明るく前向きなとても素敵な方です。

当院には、手の指に力が入らなくなり、5指に均等に力が入れられないことにお悩みで来院されました。

その他、鎖骨や肘の痛みやしびれにもお悩みでした。

手指や肘の違和感のために、毎日弾いていたピアノの練習が出来ない日が続いていたというのですから、相当ひどかったのだと思います。


お体を拝見すると、私が気になったのは手指や肘ではなく、まず足でした。(もちろん指や肘にも上半身にも問題はありましたが)

若いのにビックリするくらい足に歪みがあり、お聞きすると、少し前まで10センチヒールを日常的に愛用していたとのことです。

長身でスラっと細身のモデル体形のA様ですので、10センチヒールを履いた姿はさぞかしカッコよくて素敵だっただろうとは思いますが、

それにしても足にはひどい歪みが蓄積していて、初診から2~3回は、施術時間のほとんどを足への施術に費やすしかなく、

ほとんど肘や指に触ることができないまま2時間終了してしまっていました。


足から強い反応(テンションがかかっているという反応)が出ている限りは、その時点でA様の身体に問題を起こしている一番の原因は足です。

肘や手指の違和感は、原因ではなく結果です。

もちろんA様には足の歪み以外にも、骨盤の歪みや肩の歪みなど、ほかの問題もありましたが、

大もとの原因である足の歪みを取り除かなければ、ほかの場所に施術しても結局意味がないのです。


ありがたかったのは、そうやって最初の2~3回はほとんど肘や手指の調整ができなかったにも関わらず、A様が当院の施術を信じて通い続けてくださったことでした。

「最初のうちは、もういじめかと思うくらい足しか施術してもらえなかったですよねー(笑)」

と、今では笑い話のように初診時の頃を振り返るA様ですが、

それでも、ご本人的にも、ハイヒールを履いていたことが足を痛めつけ、結果として身体を歪ませてしまったのではという説明が腑に落ちたのだと思いますし、

その身体の土台である足を調整することなく、本当の意味で肘や手指の不調を治すことはできないということを深く理解してくださったからこそでした。

(もっとも、手指に力が入らない症状は、ほぼ足しか施術していない初診から改善してきました。)


「ハイヒールは、とにかくカッコいいから、という理由だけで履いてました。

10センチヒールって、めちゃめちゃ足が痛くなるんですよ。

でも、みんな我慢して履いてますよ。

私も、皮がむけようが、靴擦れしようが、どんなに足が痛くても、苦行に耐えるようにして履いてました。

だって、ハイヒールってカッコいいんですもん。

少し前までは、それで痛くなっても頑張れてたんです。」

…とハイヒールを履いていた頃を振り返るA様。


「でもまさか、それがピアノ演奏の足を引っ張ることになっていたなんて。

でも、確かに身体は全部つながってるんだから、

足を痛めつけながら、手では良い演奏するなんて、考えてみたら無理な話ですよね。」


お話をうかがっていて、とても興味深く貴重なお話だと感じたので、この話をブログに載せてもいいですか?とお聞きし、ご快諾いただいたので、

「今、ハイヒールを履いている方に一言アドバイスするとしたらどんなことですか?」

とお聞きしてみました。



「いやー、やめとけ、と言いたいところですが(笑)、それは個人の価値観なので。

身体を痛めつけるって分かってても、どうしても履き続けたい人は履いたらいいと思いますよ。

ただ、

それで失うものは大きいよ、

ってことは言いたいです。

私はピアノのほうが大切なので、ピアノを失うくらいならハイヒールをやめます。」



「あと、ハイヒールを履いてる人って、

靴の専門家である靴屋さんが足や身体に悪いものを作るわけない

と思ってると思います。

専門家が作ってるんだから、私が多少痛く感じても、専門家のほうが正しいのかなって。

それなりに高いメーカーのものだったし。

でも、痛みを感じる時点で、少なくとも私の足には合わなかったってことだし、私の身体はちゃんと悲鳴をあげてくれてたんですよね。

もっと自分の身体の声を聞いてあげれば良かったんですよね。」


うーん!!素晴らしい!!

日常的にハイヒールを愛用されていた方の貴重なアドバイスです!!

ぜひ普段ハイヒールを愛用している方に参考にしていただきたいです!!

経験された方にしか分からない、重みのある言葉だと思います。


そして、A様にピアノがあって本当に良かった!!

ピアノを弾きたい一心だったからこそ、5本の指が均等に動かないというわずかな問題しか起きていない段階から、早めに対策を打つことができました。

そして手指の動きに悩んでいるのに足を調整されるという意味の分からない施術を、根気よく受けてくださったのだと思います。

そして、どんな方であっても、ピアノに限らず、身体の不調や歪み、コリや痛み、月経周期、妊娠出産など、女性の体調のあらゆることが、ハイヒールの影響を受けている可能性は十分にありますよ。


そして、もう一つA様の言葉で聞き逃せない

「専門家である靴屋さんが足に悪い靴を作るはずがないと思っていた」

という言葉。


これはどんな分野の専門家であっても、心して我が身を振り返るべき言葉だと思います。

正直に言うと、私も日々の施術で様々なお客様の症例に接するたびに、靴に限らず、

専門家であるお医者さんの診断、

専門家である歯医者さんの治療、

専門家である他の治療院さんの施術、

専門家である有名下着メーカーの下着

専門家であるエステティシャンの施術した肌

などなど、お客様が関わってきた様々な専門家の方に対して思うところを抱えています。


もちろん、もしかすると私に対してもどこかで

「専門家である整体処せせらぎさんがこんな施術をするなんて」

と批判されているかもしれません。


ある分野を専門にしてお仕事させていただいている以上、誰もがこうした批判を免れることはできません。

的外れな批判で無用に傷つく必要はありませんが、

そうした批判を受けないように自己研鑽を怠らないことはもちろんですし、

それが妥当な批判である時には謙虚に耳を傾けてさらなる改善につなげるよう心掛けなければと思います。


しかし、それはそれとして、この記事をお読みの読者の皆様にもお伝えしたいことがあります。

「自分の身体の一番の専門家は、自分である」

ということを忘れないでほしいのです。

自分の感覚以上に、自分の身体の状態を正しく表してくれる物差しはありません。

どんなに優秀な専門家も、あなたの痛みを代わりに感じることはできません。

決して、他人任せにしないでください。


専門家が言っているから、

専門家がやっているから、

専門家が作ったものだから、

TVで紹介されていたから、

多少違和感があったり痛くなったりしても、専門家が正しいのかな、なんて思わないでください。

違和感や疑問があったら、ためらわずにその専門家に質問してください。(薬や治療の副作用や好転反応などの必要悪である場合もありますし。)

専門家も人間ですしミスもしますから、あなたの質問が間違いを防ぐこともあるかもしれません。

私に対しても、気になることはなんでも質問してください。

質問されたくらいで気を悪くするような専門家からは離れましょう。


専門家の言いなりになっていて、気づいたら手遅れになっていた、なんてことになっても、誰も責任は取ってくれません。

あなたの身体を最終的に守れるのは、あなたしかいません。

たとえ後から専門家に非を認めさせても慰謝料をもらっても、失った健康は返ってきません。

痛みや違和感は身体の悲鳴ですから、いつも身体に耳を傾けて自分の感覚を信じてください。

いつも自分の身体が快適に過ごせるようにしてあげてくださいね。


さて、A様はその後も根気よく埼玉県から通い続けてくださった結果、

今ではほとんど手指や肘に違和感が出ることはなくなり、ピアノの練習に支障が出ることもなくなりました。

最初の2~3回は、施術時間のほとんどを足の施術に充てるしかないほど歪みのひどかった足も、

4~5回目くらいから急激に足の状態が良くなり、ほとんど施術で足を触る必要がないくらいまで整いました。


ハイヒールが身体の歪みを招き、ピアノを弾く指の動きまで左右してしまっていたのですから、

A様の症例は、足が身体の土台としていかに大切であるかを大いに物語っていると思います。


A様、このたびはブログ掲載にあたって、貴重なご意見をお聞かせくださいましてありがとうございました。

当院の施術が、A様の今後のピアノ演奏のために少しでもお力になれれば幸いです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。